2013年6月7日金曜日

応援し、応援され (春のプラザ祭り)





朝の光を浴びた野菜は、奈良から運ばれてきた採れたての野菜ばかり。
5月の青空の下、堺市立健康福祉プラザ「春のプラザ祭り」に、NPO法人福祉ネットワーク絆は野菜の直送販売で参加しました。

日差しをさけるテントが張られ、ずらりと野菜や加工品が並べられています。
さっそく、テントの中では餅米とヨモギが蒸し上がり、餅つきが始まりました。杵を振るい餅をこねるのは、東吉野村からやってきた加工工場の面々です。使われているヨモギも実は無農薬で育てられた特別なヨモギです。

▲八臼分の餅をつきます。

工場長の岡本さんはヨモギ作りをはじめて13年目になるといいます。
「ヨモギはどこからでも生えてくるんです。それこそその辺りのアスファルトの間からでも」
ヨモギが生えるのは標高にすると海抜0メートルから700メートルと幅広いのですが、味や香りが最も良いのは300メートルから500メートルの間です。
「東吉野村では350メートル地点と、450メートル地点の2箇所でヨモギを育てています。環境汚染もない安全安心なヨモギで味も香りも違いますよ」

つき終えた餅が広げられ、手慣れた作業で自家製のあんこを包みヨモギ餅が完成します。これを一日で8臼分もつくのだとか。

▲「つきたてのヨモギ餅が食べたい!」そんなお客様が沢山いらっしゃいました。



その間にも野菜が売れていきます。宇陀市や天理市の無農薬・有機栽培で旬の菜っ葉類やレタスがオススメ商品です。人気のほうれん草はいち早く売り切れてしまいました。
「オーナーの仕入れミスやな。もっとほうれん草仕入れな!」
笑顔がほころぶ売り場。ですが絆の代表の藤岡さんは出足はそれほど良くはないといいます。
「早いときには午前中で全部売り切れてしまうからね」
今日のような催し物や講演が主体のイベントよりも、日常品を安く購入できるようなイベントの方が野菜市は賑わうのです。



こうして様々なイベントに『絆』が参加するのは「生産者を応援したい、患者を応援したい」という思いからです。

『絆』はNPO法人として自立する術を探し、縁があって奈良の生産者の方々と出会いました。その時、生産者は農産物の売れ残りに困っていたのです。
都市部に住む消費者にとっては、無農薬・有機栽培の野菜がスーパー並みの価格で手に入るのは驚きの限りですが、生産地の道の駅ではだぶつきがちなのです。
「虫食いの野菜なんか見向きもされなかったりします」
生産者のために野菜を販売する機会を増やしたい。
『絆』は「同じ売るなら過疎の村の手助けになれば」と野菜販売をはじめました。イベントでの出店から始まり、今では上野芝の『ショップ絆』の売り上げで、すでに店舗を運営する経費はまかなえるようにまでなったのです。


この日のイベントには、ショップ絆のメンバーや東吉野村から駆けつけた人々以外にもスタッフが加わっていました。その1人がNPO法人 堺難病連の下町勇さんです。

▲堺難病連の下町勇さん。

「堺難病連は『絆』とは別の組織ですが、やっていることは同じだと思っています」
まずは一般の方々に、難病患者の存在や抱えている問題を知って欲しいと下町さんはいいます。
「難病患者は、日本では200人に1人といわれています」
実は身近な存在である難病患者なのですが、病気以外の所でも苦境に立つことが多いのです。

▲ボランティアスタッフと『絆』代表の藤岡さん。

「たとえば就労問題です。難病患者というだけで企業は遠ざける傾向があり、障がい者よりもなお受け入れ先は少ないのが現状です」
そんな現状を知ってもらったり、行政に働きかける活動をするにも難病連の会費だけではまかないきれません。バザーやイベント出店を行い、活動費を捻出しているのです。
ただ活動費だけが目的ではありません。それ以上に大切な意義があります。
「難病患者が社会とふれ合うことが大切だと感じています。ひきこもりがちな難病患者が社会に出てストレスが解放されるんです」
ショップ絆でも、患者自身が販売スタッフとなったり、ヨガ教室で一般の方とふれ合うことによって、社会の一員として自分を感じることが何よりも患者自身の気持ちを大きく変えました。
まさに「絆」があってこそ、なのです。




「春のプラザ祭り」のイベントには、大阪のボランティアもスタッフとして参加していました。ボランティアの方達も「健康プラザの存在を市民に知って欲しい」などの思いを持って協力しているそうです。
『絆』が生産者や患者を応援することを、ボランティアスタッフが応援し、また健康プラザが応援されることにつながっている。
応援と応援の連鎖が循環している。そんな現場の空気が満ちていたイベントでした。

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